早送りの映画

 最近新聞を読んで知ったのですが、若い人を中心に映画等、様々な動画を早送りで鑑賞する人が増えているそうです。映画の場合は、短時間でストーリがわかり、何本も数をこなすことができるのだそうです。それ自体を非難するわけではないのですが、まさにヨガの対極にある行為だなぁと思い、考えさせられる記事でした。

 私達の心は、まさに早送りの映画のようです。それも同時に何本も上映され、あっちの話、こっちの話と揺れ動きます。ある時は過去の失敗の映像が流れ、次の瞬間には未来の不安を投影した自分の姿が浮かび、次の瞬間には「今日の晩御飯どうしよう」というセリフが流れ、ある時には怒りを放出するような音楽がガンガン鳴り響きます。実生活に妄想が加わり、サスペンスもホラーもラブストーリーも混ざりあい、様々な場面とセリフと音楽、ノイズが入り乱れ、早回しで再生されています。私たちの思考は絶えず揺れ動き、無意識下ではとどまることはありません。

 きっと皆さんもヨガを深めていくと気づきます。例えば仕事で嫌なことがあった時、怒っている上司の表情と声がどこまでもつきまとってくる。エンドレスに頭の中に再生されてしまう。日頃はそれが無意識に再生され続けるのですが、ヨガや瞑想を行うと「あぁ、こんなことが気になっているんだなぁ」と意識できるようになります。この頭の中を流れ続ける映像や音を、まずは意識下に置くことが重要です。つけっぱなしのテレビのように流れ続ける映像や音を認識した時に、やっとテレビを消すことができるのではないかと思います。

 私はいつもリラックスクラスの最後に「心も体も穏やかでありますように」と唱えます。自分に向かっても唱えています。日常がいつも穏やかだったら刺激のないつまらないものになってしまうので、いつも穏やかでなくたっていい。ただ、ヨガが終わった時には、最初と比べてどこかすっきりしているといいなぁと思います。早送りの映画が入り乱れていた頭の中が、ほんの少し落ち着いて、とてもいい映画をじっくり1本見終えた時のような、そんな充実感が味わえるといいなぁと思うのです。