ゆうゆう通信No63「自己肯定感~自分を好きになろう」

私はヨガ教室を始める以前、24年間、特別支援学校という、様々な障がいをもつ子供たちの学校で教員をしていました。今回は、その時に出会った一人の児童との思い出から始めたいと思います。彼は、自閉症と呼ばれる障がいをもっていました。それゆえに、「社会」という彼にはよく理解できない世界で、だめな自分しか感じられなくなり、周囲の人が困ることをすることでしか、自分を表現できなくなっていました。極度の自信のなさは、本当にやりたい「遊園地で電車の乗り物に乗る」ということさえ、怖くて怖くて、身体が一歩も前に進まなくなってしまうのです。そんな彼と私の、汗と涙にまみれた数々あるエピソードは、ここでは語りきれませんが、とにかく私は、彼が「できる自分」を発見し、それを一緒に感じられるような工夫を重ねました。そうなんです。彼が変化し、成長することとなるキーワードは「自己肯定感」でした。

 

「自己肯定感」とは、すごく簡単に言うと、「自分を好きになる」ということです。あるいは「自分に自信をもつ」ということです。そして、私は、これが一番大事な自分の軸となる感覚だと思うのです。今、彼のことを思い出しつつ、ヨガを皆さんにお伝えする身となって、この「自己肯定感」は誰にとっても大切なのだなぁとあらためて感じます。

 

最近は、この自己肯定感の低い若者が増えているのだそうです。「自分はすごい」と思いすぎるのもどうかとは思うのですが、人と比べて劣っていると感じすぎるのは、心身を痛めつけます。そしてその極みが「自分で自分をこの世から消し去る」ということになってしまうのです。

 

 誰でも日常的に、劣等感を感じる場面はあります。それが普通です。でも、例えば、転勤や転居等、環境の変化があると、うまくなじめずに、周囲の人と比較してダメな自分を感じやすくなったりします。あるいは、年を重ねて、あちこちに不具合が出てくると、元気そうにしている人と比べて落ち込んだりすることもあるかもしれません。真面目な人ほど、「できない自分」を感じてしまうのでしょう。そして、この4月はそんな自己否定感が強く出やすい時期かもしれません。

 

そんな時こそ、ヨガの出番です。ヨガは人と比べません。ただ、自分の中に心地よさを見つけていく作業です。そして、小さな小さな変化を追っていきます。前屈で少しだけ体を前に倒すことができた、伸びた、呼吸が深められた、そういう小さな変化を肯定します。自分の心身という小宇宙の素晴らしさを実感していきます。自分を丸ごと認めていくのです。自分という軸を作っていく、そんなヨガに私も何度助けられたことでしょう。

 

人と比べて、だめな自分を感じてしまう時、ヨガは必ず助けてくれます。ただ、「今、ここ」にいるだけでいい。そんなひとときが、あらたな力をきっと与えてくれると思います。