ゆうゆう通信No60「ヨガスートラより~「勧戒」について

 私事ですが、年末年始に北陸旅行をし、元日に永平寺に行きました。元日なので、山門までしか入れなかったのですが、見上げると遠くに列をなして歩く修行僧の姿が一瞬垣間見え、その姿が何となく心に残りました。あたり一面雪がしんしんと降り積もる、こんな寒い場所で、たいした防寒着も着ないで、朝早くから一心不乱に修行に励む修行僧。その過酷さを想像するだけで、身が引き締まる思いがします。インターネット検索によれば、雲水と呼ばれる修行僧は、朝3時半に起き、「行住座臥」全てが修行。そして、永平寺は日本で一番修行が厳しいところだそうです。信仰もないのに、神社仏閣を訪ねる私のようなものにさえ、そういう場のピーンと張り詰めた、澄み切った「気」が感じられました。

 

以前にもお伝えしましたが、仏教や「禅」の考え方は、その根源をたどるとヨガにたどり着きます。そこで、今回ご紹介したいのは、ヨガスートラというヨガの理論の中にある「勧戒」(ニヤマ)です。これは、心を平安に保つために、できるだけ行ったほうがよいとされることなのですが、修行僧の行いに通ずるものがあるのではないかと思います。以下のように、5つの項目があるのですが、それを私なりに簡単に解釈してみました。一般の私たちの生活にも活かせるのではないかと思います。

 

1「清浄」 外側を清潔にするだけでなく、心身ともに内側から綺麗にする

2「知足」 多くを求めすぎず、今もっているもの、程々で満足し、感謝する

3「苦行」 無意味に痛めつけることではなく、自分に不都合な状況や苦痛を受け入れる強さをもつ

4「読誦」 自分の心をよい方向に導いてくれる本を読む

5「祈念」 無宗教でも構わないので、大自然や、生命に畏敬の念をもち、感謝する

 

 「禅」では、心を整えるのに、直接心にはたらきかけるのではなく、日常の行動・言動といったものを正すことで心を正していくという考え方があります。最近は、そのような考え方がブームとなり、関連する本の売れ行きも伸びているそうです。この5つの「勧戒」も、その基本となるものだと思います。

 

 年の初め、この「勧戒」を頭の片隅に置いておこうと思います。大雑把で、せっかちで、落ち着きがない私。きっと今年も日常のドタバタにあたふたする日々となることでしょう。元旦に訪れた、永平寺に降り積もる雪のように、白く、凛とした、静かな雰囲気に憧れつつ、そんなドタバタの日々も大切に過ごしていきたいと思います。そして、今年も、ヨガクラスで、皆さんと充実した密度の濃い時間を共有できることを楽しみにしています。